君想ふ~第二章「出会い」1~

第二章 「出会い」
俺は平凡な人間であった。それは自覚していた。
だが、それを決して認めようとはしなかった。
「俺は必ず、いずれ、見返してやるんだ」と。
それは大学生の時であった。
当時の俺のことなんて思い出したくない。
本気で、本気で本気で愛していた彼女に振られ、
それが高校の終わりの方だったから、受験は総崩れ。
自分の行きたいような大学には、行けなかった。
最初は大学なんてどこでもいいと思っていた。
なぜって?
俺は本気で、当時付き合っていた彼女のことが好きだったからだ。
そんな、大学のことを考える余地なんてなかった。
ただ、苦しみはどんどん増していった。
大学で、したいことができない。
俺はすべてをなめていた。
「自分のやりたいことができないというのは、
これほどまでに辛いことだったのか。」と。
俺は彼女のことを忘れられなかった。
そして、大学に、行くことすら億劫になっていた。
そんなある日、いつものように遅れて大学に行くか、
それともそもそも行かないか迷っていた時、
ポストに入った、1枚のフライヤーを見つける。
バー「Dark」求人というものであった。
自分は何枚かあるフライヤーをまとめて捨てる時、
本当に既の所でそのフライヤーに目をやった。
薄っぺらいコピー用紙に、手書きで。
ただ、その時俺は、このバーに、
行ってみるだけ行ってみようと思った。
俺は日本一の酒豪だ。恨み晴らしに酒はちょうどいい。
こんなみすぼらしい紙を送ってくるような店なら、
バーなんて敷居の高いところでも、
入ってみれるかもしれない、と思ったのだった。
今思えば恥ずかしい。
田舎から上京までして、大学2年にもなるのに、
なんら洒落た店にも入れず、まず最初に入れそうなところから,,,,。
自信過剰は、幼稚の塊みたいなものだ。
都会の大学生なんだったら、普通に億劫にならずともいけるのに。
ま、回想はさておき、俺は結局その酒場に行ってみることにした。
ふ、俺は今酒場と言ったな。面白い。
今思い出せば、とても面白い。